誘導灯とは?役割や種類、設置の注意点を紹介!

誘導灯とは(1024×341)

誘導灯とは、火事や災害時に、建物にいる人々が安全に避難できるよう避難口や避難方向を示すための照明設備のことです。誘導灯を適切に設置しておくことで、災害や停電の発生時に速やかに避難ができます。

消防法により、設置する建物・場所に応じた誘導灯を選定する必要がありますので、誘導灯の種類や設置基準、法令をしっかりと把握の上、正しい設置方法で適切な位置に誘導灯を設置することが大切です。

誘導灯とは?誘導灯の役割について

誘導灯は、災害時などに建物の中の人々が安全かつ速やかに屋外へ避難するための防災照明器具です。避難口や避難方向をピクトグラムにより表示しており、誘導灯の指示に従い移動することで建物から避難することが可能です。

普段は常用電源により点灯していますが、停電により電源供給が遮断された場合には、自動的に内部バッテリーの非常電源に切り替わり、暗闇でも20分間以上の点灯が可能な仕様となっているため、安全に避難することができます。
なお、大規模な建築物などでは避難にも時間を要する可能性があり、60分間以上点灯可能な誘導灯の設置が必要です。

誘導灯にはどのような種類がある?色や大きさ・新旧仕様の違いについて

誘導灯にはその目的に応じて種類があり、消防法により色や大きさなども細かく規定されています。LEDを採用した現行型の誘導灯と旧仕様の違いも併せて解説します。

誘導灯には3種類ある

誘導灯には3種類が存在し、通路誘導灯はさらに2種類に分類されます。

  1. 避難口誘導灯
    (避難口を明示するために設ける)
  2. 通路誘導灯
    ┣・室内通路誘導灯
    ┃(避難方向を明示して避難方向に誘導するもの)
    ┗・階段通路誘導灯
    (避難に有効な照度を与えるため避難経路となる階段などに設ける)
  3. 客席誘導灯
    (劇場などの客席通路に設ける)

誘導灯は常時24時間点灯させる必要がありますが、外光などにより誘導灯の避難口や避難方向が識別できる場合や、映画館などで営業上やむを得ず消灯する場合など、条件付きで一部例外も認められています。

誘導灯の色と大きさ

避難口誘導灯と室内通路誘導灯は、法令により色やパネルに表記されるシンボルが定められています。避難口誘導灯は緑地に白室内通路誘導灯は白地に緑の表記となっています。
また、誘導灯の大きさは、A~C級の3つに分かれています。それぞれの特徴は以下の通りです。

等級表示面寸法高輝度誘導灯従来型誘導灯
A級40cm角以上40形大型
(40形×2)
B級BH形20cm角以上20A形大型
(40形×1,32形・35形×1)
BL形40cm角未満20A形中型
(20形×1)
C級10cm角以上10形小型
(10形×1)
20cm角未満10形小型
(10形×1)

誘導灯の新旧仕様の違い

旧仕様の誘導灯は、大形・中形・小形の3種類あり、直管蛍光灯を光源として使用しているため、横長形状で比較的大きなサイズでした。

旧仕様の誘導灯は、蛍光灯の熱の影響により劣化しやすいものでしたが、現行型のA級・B級・C級はLEDを光源に使用しているため発熱も少なく熱による変色などの恐れがありません。定期交換やメンテンナンスの際に、LED式の現行型誘導灯へ交換することが推奨されます。

誘導灯の設置義務・違反時の罰則について

誘導灯は、設置基準に則った設置が義務付けられています。
また、違反した場合は罰則があるため、誘導灯の役割と法令を理解した上で基準に則った設置を行いましょう。

誘導灯の設置義務

誘導灯は、消防法施行令第26条と各自治体の火災予防条例などにより細かく規定され、映画館や病院、ホテル、デパートなど不特定多数の人が集まる場所には全階への設置が義務付けられています。

共同住宅や工場など特定の人が使用する建物の場合は、設置基準が緩和されており、地下(地階)、無窓階、11階以上の高層階にのみ誘導灯の設置が義務です。

一方で、不特定多数の人が出入りする特定防火対象物に該当していない建物で、日常的に特定の人が出入りする事務所や工場などは、建物を使用する人が建物の構造や避難経路などを理解していると考えられており、誘導灯の設置基準は緩和され小型の誘導灯が利用できます。

設置義務違反の罰則

誘導灯の設置義務違反により建物の使用停止命令を受けた場合には、違反者だけではなく建物の管理者にも両罰規定として罰金が課されます。

【消防法にもとづく罰則規定(平成15年10月改正法施行)】

罰則対象罰則内容関連法令
建物の使用停止命令などを受けた違反者
(法人代表者など)
3年以下の懲役
または
300万円以下の罰金
消防法
第39条2の2
建物の使用停止命令などを受けた違反法人
(管理会社など)
両罰規定として
1億円以下の罰金
消防法
第45条
両罰規定:法令違反行為に対して行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても罰金刑を科すこと。

消防法は平成15年10月に改正法が施行され、防災設備の設置基準、設置義務、点検、報告書提出義務や罰則面において、大幅に厳格化されています。

これは平成13年9月に新宿歌舞伎町で発生した雑居ビル火災が法改正の契機となっており、この火災ではずさんな防災管理により避難が適切に行えず、44名もの犠牲者を出しました。

火災などで煙が充満してしまった建物内では、避難する方向や出口を見失い逃げ遅れにつながります。誘導灯は暗闇でも避難方向や避難口を示すための、生死をわける大切な防災設備です。

誘導灯の設置基準とは?各誘導灯それぞれの基準の違いや注意点について

誘導灯には、様々な種類がありますが、それぞれの種類に応じた設置基準があるため、誘導灯を設置する際は、それら設置基準や注意点をきちんと把握しておく必要があります。

避難口誘導灯の場合

避難口誘導灯の場合

避難口誘導灯は、非常時の際に安全な避難が行えるよう、避難口への方向を示す照明器具です。緑色の背景に、緑色の人間と避難出口or白色の矢印のピクトグラムで構成されています。
設置場所は、消防法(消防法施行規則第28条の3)で規定されているため、しっかりと確認しておきましょう。

  • 設置場所
①屋内から直接地上へ通じる出入口
(附室が設けられている場合にあっては当該附室の出入口)
②直通階段の出入口
(附室が設けられている場合にあっては、当該附室の出入口)
③前①or②に掲げる出入口に通じる廊下、又は通路に通じる出入口
④前①or②に掲げる避難口に通ずる廊下、又は通路に設ける防火戸で直接手で開くことができるもの(くぐり戸付き防火シャッターを含む) がある場所

通路誘導灯の場合

通路誘導灯の場合

通路誘導灯は、廊下や階段などに設置し、避難口がどちらの方向にあるかを示す誘導灯です。白色の背景に、緑色の人間や矢印のピストグラムが描かれているのが特徴です。
具体的な設置箇所は、消防法(消防法施行規則第28条の3)にて規定されています。

  • 設置場所
①曲がり角
②主要な避難口に設置される避難口誘導灯の有効範囲の箇所
③廊下または通路の各部分を通路誘導灯の有効範囲に包含するために必要な箇所

点滅・誘導音声付加型誘導灯の場合

点滅・誘導音声付加型誘導灯の場合

点滅・誘導音声付加型誘導灯は、自動火災報知設備と連動して、警報音とフラッシュ光で避難口を知らせる誘導灯です。火災時に煙で視界が悪くなった場合も、的確に避難方向へ誘導できるため、人が多く集まる大型施設などによく使用されます。

  • 設置場所
①屋内から直接地上へ通ずる出入口
②直通階段の出入口

誘導灯の寿命はいつごろ?交換時期・目安について

誘導灯のランプやバッテリー、本体器具には、それぞれ寿命があります。外観に劣化や異常がなく見えても、時間の経過とともに確実に劣化が進行しています。

それぞれ交換の目安や耐用限度が決まっていますが、万一の劣化によるトラブルを考慮して、早めの交換をおすすめします。

ランプの寿命と交換時期

誘導灯に使用している照明はいくつか種類があり、交換時期も照明の種類によって大きく変化します。

光源耐用時間(目安)耐用月・年数
40W形蛍光灯12,000時間約1.4年
20W形蛍光灯8,500時間約1年
10W形蛍光灯6,000時間約8ヶ月
コンパクト形蛍光灯3,000~6,000時間約9ヶ月
LEDタイプ60,000時間約10ヶ月

しかし、設置している器具の時間をすべて把握するのは困難です。
そのため誘導灯には「ランプモニタ」がついており、一目で交換時期がわかるように示されています。点検時にランプモニタが赤点滅していれば、ランプ交換が必要な状態です。すぐにランプを交換しましょう。

バッテリーの寿命と交換時期

誘導灯に内蔵しているバッテリーは、おおよそ4~6年で寿命を迎えます。
しかしながら、使用状況や環境で変動する可能性があるため、定期的な点検で点灯時間や交換時期を確認し、バッテリーの寿命を判断します。消防法により、誘導灯は、20分以上点灯する必要がありますので、20分間点灯(但し、長時間定格型の場合は60分間)しない場合は、速やかにバッテリーを交換する必要があります。

器具の寿命と交換時期

器具本体の寿命は、約8~10年で交換するのが目安です。誘導灯は定期的にランプを交換していても、本体内部の劣化が進むと正常な役割を果たせません。

設置してからおおよそ8~10年経つと、劣化が進み、器具本体の故障が増え始めます。さらに12年以上になると、内部の絶縁物の劣化が進み、器具の全交換が必要とされる「耐用限度」になります。
本体の交換時期は、設置年シールや認定マークで把握できますので、点検時は設置年を確認し、交換時期の目安を確認してください。

誘導灯の交換時の作業手順と注意点について

誘導灯の交換は、「ランプの交換」、「バッテリーの交換」、「誘導灯器具の交換」の3つのケースがあります。「誘導灯器具の交換」は、有資格者でなければ行ってはならない作業である一方で、「ランプの交換」や「バッテリーの交換」については、資格がなくても交換を行うことができます。

しかしながら、誘導灯は、災害時に人々の安全を守る非常に重要な設備ですので、いざという時に問題なく作動するよう経験や知識が豊富な有資格者や専門業者に交換作業を依頼することをおススメします。

ランプ・バッテリーの交換

ランプやバッテリー交換は、資格が不要且つ比較的簡単であるため、速やかに交換することが可能です。
主な作業内容や手順は、以下の通りです。

ランプの交換
ランプの交換
  1. 誘導灯の側面カバー・前面パネルを外す
  2. 熱に注意しながら、ランプを外して交換
  3. 側面カバー・前面パネルをつけて完了
バッテリーの交換
バッテリーの交換
  1. 誘導灯の側面カバー・前面パネルを外す
  2. 固定金具やコネクタを外して、バッテリーを交換
  3. 固定用金具とコネクタを取り付け、側面カバー・パネルをつけて完了

どちらの場合も、誘導灯のパネルを外してしまえば、交換は容易です。
なお、バッテリーは劣化が進むと漏電につながり、火災の原因となることもあります。使えるからと言って使い続けるのではなく、目安時期になったら速やかに交換を行いましょう。

器具の交換

器具の交換

誘導灯本体の交換は、電気工事士と消防設備士の資格がないと作業ができません。
無資格での交換を行った場合は、「3ヶ月以下の懲役」または「3万円以下の罰金」が課されます。必ず本体器具の交換は有資格者が行うようにしてください。
また、器具本体は100Vの電気を扱うため、知識のない無資格者が作業を行うと、感電事故や漏電火災につながりかねません。

まとめ

誘導灯は、消防法などにより劇場や映画館、病院、百貨店など、不特定多数が出入りする建物には設置が義務付けられています。

一方で、一口に誘導灯と言っても、様々な種類があり、設置する場所や建物に応じて適切なタイプを選定する必要がある為、それぞれの誘導灯の特徴や消防法等の法令をしっかりと把握することが大切です。
近年では、LED光源化が進み、従来型よりメンテナンスが簡単になり、寿命も延びていますが、いざ火災が発生した時に確実に作動し機能を発揮するかどうかを、日頃から確認しておくことも重要です。

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