漏電遮断器とは?原理や種類、配線用遮断器との違いについて解説
漏電遮断器(ELCB、ELB、漏電ブレーカー)とは、漏電を検知した際に回路を自動的に遮断する機能をもつ機器のことです。「漏電ブレーカー」「ELCB・ELB・ECB(Earth Leakage Circuit Breaker)」と呼ばれることもあります。
漏電遮断器の取り付けは、漏電によって生じる火災や感電などの重大な事故を防ぐことができます。
しかし、適した漏電遮断器を選定・使用しなければ、充分な効果を発揮することはできません。今回は漏電遮断器の原理や選定方法について解説しつつ、似た特徴をもつ配線用遮断器との違いについても紹介していきます。
漏電遮断器の原理
漏電遮断器の回路を遮断する機能により、漏電による火災や感電などの災害を防ぐことができます。電流は本来、回路内の行きと帰りの電流の値は同一となります。
しかし、一部の電流が何らかの原因によって漏電してしまった場合、この電流に差が生じてしまいます。この電流の差のことを「漏洩電流」といいます。漏洩電流によって電流に差が生じると、漏電遮断器の漏電検知コイルに電圧が発生します。このコイルの電圧を制御回路で増幅し、一定以上の差になると回路が遮断されます。
配線用遮断器との違い・見分け方
漏電遮断器の仕組みは配線用遮断器と仕組みが似ています。
しかし、配線用遮断器は「電路に異常な電流が流れた際に回路を遮断・保護する」のに対し、漏電遮断器は「漏電を検出した際に回路を遮断して感電を防止する」という明確な違いがあります。
また、漏電遮断器には下記のような特徴があり、見た目から見分けることも可能です。
【漏電遮断器の特徴】
テストボタン | 漏電表示装置 | 感度電流表示 |
漏電遮断器には「テストボタン(赤色・緑色・灰色)」が備わっています。定期メンテナンスの際に使用する部分です。 | 漏電遮断器には「漏電表示装置」が備わっています。漏電を検知すると飛び出すため、漏電の有無を確認することができます。 | 漏電遮断器には「感度電流表示」が記載されています。漏電遮断器がトリップする数値を表しています。 |
漏電遮断器の種類
漏電という危険を事前に察知し、大きな事故を未然に防ぐことができる漏電遮断器ですが、誤った使い方をしてしまえば、逆に大きな被害をもたらす恐れがあります。
漏電遮断器にはいくつかの種類があり、検知感度の高さや遮断速度の速さによって分けられています。感度が高いタイプのものを主要な配線に設置した場合、その先に繋がっているどこかで漏電などのトラブルが起きると、設置されている配線全体が遮断されてしまい、大規模な停電につながる恐れがあります。
また、逆に感度の低いタイプのもので漏電の恐れがある配線に設置してしまうと、感度が低いのでごく僅かな漏電を検知することができず、感電するという危険性があります。漏電遮断器を設置する際は、どこにどの形式の漏電遮断器を設置するかを知る必要があります。
下記の項目では、漏電遮断器の種類や選定基準に関して表にまとめています。参考までにご覧ください。
高感度形
区分 | 漏電表示装置 | 感度電流表示 | 反限時形 |
感度電流 | 5~30mA | 5~30mA | 5~30mA |
動作時間 | 0.1秒以内 | 0.1~2秒以内 | 0.3秒以内 |
選定基準 | 漏電遮断器には「漏電表示装置」が備わっています。漏電を検知すると飛び出すため、漏電の有無を確認することができます。 | 漏電遮断器には「感度電流表示」が記載されています。漏電遮断器がトリップする数値を表しています。 | 不要動作を防止しての感電保護の場合。危険性の低い場合には動作しない特性がある。 |
中感度形
区分 | 高速形 | 時延形 |
感度電流 | 50~1000mA | 50~1000mA |
動作時間 | 0.1秒以内 | 0.1~2秒以内 |
選定基準 | 幹線に使用し、接地抵抗と組み合わせて感電保護を行う場合。 | 電路こう長が長い場合や、回路容量が大きい場合の幹線保護として使用。 |
低感度形
区分 | 高速形 | 時延形 |
感度電流 | 3~20A | 3~20A |
動作時間 | 0.1秒以内 | 0.1~2秒以内 |
選定基準 | アーク地絡損傷保護を目的とする場合。 |
漏電遮断器のメンテナンス・交換頻度
漏電遮断器を設置することによって、感電や火災といった事故を未然に防ぐことができます。
しかし、電気器具は消耗品です。適切なメンテナンスや交換をしなければ、その機能を充分に発揮することはできません。
メーカーや機種にもよりますが、ブレーカーの寿命は15年前後といわれています。「遮断器が熱くなっている」「異臭や異音がする」「テストボタンが作動しない」「遮断器の外装が変色している」などの症状を見かけた場合は、交換が必要となる場合があります。
また、設置されている環境や使用状況によっては劣化しやすくなります。下記の表では標準使用および環境についてをまとめていますので、設置をする際の参考としてください。
【漏電遮断器の標準使用および環境】
項目 | 標準使用・環境 | |
周囲温度 | -5~+40℃(24時間平均35℃を超えない場所) | |
振動・衝撃 | 異常な振動・衝撃を受けない場所 | |
通電電流 | 平均値が定格電流の80%以下 | |
その他 | じんあい・煙・腐食性ガスなどがないこと |
その他、機器を頻繁に開閉している、テストボタンを必要以上に押している場合でも劣化が早まる恐れがあります。少しでも異常を感じた場合は、重大な事故を引き起こす前にメンテナンスや交換をするように心がけましょう。
まとめ
便利であると同時に扱い方を間違えれば重大な事故につながる恐れのある電気。安全に使用するためには、漏電遮断器や配線遮断器といった機器の存在は必要不可欠です。しかし、ただ設置するだけでは充分な効果を発揮することはできません。
使用する環境などに応じて適切に設置する必要があります。漏電による感電や火災といった重大な事故を未然に防ぐためにも、設置する環境をしっかりと把握してから慎重な選定を行いましょう。